|
重松 清〔著〕 |
amazonでレビューをみる オンライン書店BK1でレビューをみる |
開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。「ジャージーは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます。」先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん、新天地に旅立つフーさん。自分の居場所を捜す四人組みの日々の哀歓を温かく描く連作。「帰ってきた定年ゴジラ」収録の完成版。(文庫本裏表紙より引用)
「帰ってきた定年ゴジラ」を含めると8つの話からなる連作です。
定年後の静かな日々が語られているのにも関わらず、随所に胸にこみ上げるものがあり、おもわず熱くなってしまいました。
物語は、家族の問題や、不倫問題、ニュータウンの持つ問題など様々な点に及びますが、一番心に残ったのが、第4章の「夢はいまもめぐりて」で、山崎さんの若い頃が語られた場面でした。
東京で働き始めた山崎さんに会おうと母親が上京します。上野駅の雑踏の中で山崎さんを待つ母親。母親は山崎さんを見つけほっとした笑みを浮かべるのですが、山崎さんは顔を背けてしまいます。
学校にお弁当を届ける母親のように、優しさや親切が、自分の領域だと信じ込んでいる枠を踏み越えてくると、たとえそれが親だろうが友達だろうが、嫌悪感が沸くことがあると思います。それが表情や態度に出てしまい、後で後悔する。たとえ一瞬のことだったとしても、それは相手に伝わってしまうもの。ひょっとしたら、うまくごまかせることもあるかもしれないけれど、自分のとった行動はずっと心に重くのしかかる。
こういった些細なことをしっかりと描写できる重松さんに感心してしまいます。
以下は帯に掲載された著者の言葉
『”父”の話を書きたかった。我が家では二年前に実父が、昨年義父がそれぞれ定年を迎えた。お手本となったか、反面教師となったかはともかく、戦後の日本を支えてきた”父”の世代は「これが俺達の考える幸せというものだ」と確かに子供たちに伝えてくれた。僕たちは、はたして子供につたえるべき幸せの形を持っているのだろうか・・・・・。』
ユーモア溢れる作品ですがその内容は深く考えさせられる一冊でした。
いつか自分も通る道。その為の今を精一杯生きようと思います。
2000年にNHK-BSでドラマ化。2001年にはNHK総合でも放送されたそうです。






