重力ピエロ [伊坂幸太郎]

重力ピエロ
伊坂 幸太郎著
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兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは――。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。(文庫本裏表紙より引用)

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

作中の春の言葉どおりの作品だったように思います。

主人公である泉水は遺伝子を扱う会社に勤めていて、弟の春から、その会社が放火に遭うことが告げられます。春が事件を予見できたのは連続放火のルールを発見したからであり、兄と父親を巻き込んで3人がその謎に迫ります。

弟の春は強姦によってできた子でした。母親は既に亡くなっており、父親は癌に侵されています。暗い過去を持つ家族が暗い状況に置かれつつも、話が暗くなることはなく、明るい話題ではないはずのに3人の発する言葉には深刻な感じが全くせず、時にはユーモア溢れる台詞が飛び出します。

強がりでも、開き直りでも、諦めでも、覚悟でもない。

3人の物事に対する向き合い方は到底自分にはできないなと関心してしまいます。物事をそのまま受け止め、受け入れる。これは伊坂さん自身のスタイルなんじゃないかなと思います。だからこそ、伊坂さんの作品には素敵な台詞がたくさん生み出されるのかなと。常識的には無茶苦茶なことを言っているのにも関わらず共感できることが多いのは、物事をそのまま受け入れそれをそのまま表現できる力があるから。解説にもありますが、スタイリッシュな文面も決して飾ろうとしたものではないから嫌味がないのだと思います。シュールだとかエレガントだとか緻密だとか言われてるみたいですが、それは伊坂さんにとっては狙ったものではないのだと私は思います。

話がずれてしまいましたが、とにかくこの作品は良かったです。(笑)
こんな簡単なまとめ方でオイオイと思うかもしれませんが良かったものは良かったのです。

終盤の遺伝子や科学を飛び超えた父親の台詞には拍手したくなりましたが、重力を無視するピエロのように、常識を飛び越え、悲しくても笑える奇跡のこの作品にこそ拍手です。

第129回直木賞候補作となっています。また、このミステリーがすごい!2004第3位、本屋大賞2004第5位に選ばれています。

posted by 玉葱 at 2006年09月02日 | Comment(4) | TrackBack(15) | 伊坂 幸太郎
この記事へのコメント
 はじめまして、こんばんは♪
 私もこの本を読みました。
 TBさせていただきましたので、
 よろしくお願いします◎

 とにかく良かった!
 私も同じ感想です(笑)
Posted by miyukichi at 2006年09月23日 01:16

>miyukichiさん
本当に良い作品でした。
今日、仕事で大失敗しまして、それを上司に陽気に伝えたら、
こてんぱんに怒られました。開き直るのはよくないですね(;^_^A
Posted by 玉葱 at 2006年10月04日 23:59

はじめまして。私もこの作品大好きです。物語の構成はいたってシンプル(途中で犯人がわかってしまうくらい)ですが、それよりも父親の心意気に感動しました〜。
世間一般からみると、春は強姦の末に生まれた「歓迎されない子供」なんだろうけど、彼を取り巻く家族は明るくて温かくて、その温度がとても好きで、私は一気読みしてしまいました。
欲を言えば、もう少し春の深層心理に迫って欲しかったかも。

Posted by bird at 2006年10月05日 01:49

はじめまして、こんにちわ。
先日はTBありがとうございました!
「重力ピエロ」とてもよかったですよね。
シュールな内容でありながらユーモラス、最高です。

こちらからもTBさせて頂きました。
他にも沢山お読みになられているようなので、
よろしければまた御邪魔させてください。
Posted by るい at 2006年10月05日 15:39

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